生産技術力を生産性で測定する

(1) 原価企画活動とライフサイクルコスト

 

原価企画とは
①中・長期利益計画で必要とされる目標利益を所与の市場環境条件の中で達成するために、
②顧客の要求を満たす品質・機能・価格・納期などの目標並びに目標原価を決定し、
③対象製品の環境負荷低減・要求品質・納期を満たしながら、
④企画段階から始まるライフサイクルの全活動にわたって、目標を達成するように取り計う全社的活動である。

下図は、ライフサイクル・コストが決定する時期を概念的に表したものです。図のように、ライフサイクル・コストは製品の企画段階・構想設計段階でほぼ決定してしまい、コスト管理の重要性はまさにこの段階です。

(2) イニシャルコストとランニングコスト

 第1段階のコストをイニシャルコスト、第2段階以降のエネルギー費、保全費、改修、更新費などのコストをランニングコストと呼び、費用対効果を推し測る上でも重要な基礎となります。イニシャルコストは明らかに固定費ですが、ランニングコストの中に固定費と変動費が含まれます。製品や設備が稼働するとかかるエネルギー費や直接労務費は変動費になります。
 ライフサイクルコストの低減を図るには、企画・計画段階から全費用を総合的に検討して費用対効果を推し量って投資の可否を決定することが重要です。
 製品や構造物等を低価格で調達、製造することが出来たとしても、それを使用する期間中におけるメンテナンス(保守・管理)、保険料、長期的な利払い、廃棄時の費用までも考慮しないと、総合的にみて高い費用となることから生まれた発想です。イニシャルコストのみならず、ランニングコストを含めた総合的な費用の把握は、近年における経営意思決定の常識となっています。
 図に示すように、両者のコストは生涯生産量によって異なります。生涯生産量の多い時はランニングコストの負担が大きいため自動化してもランニングコストを抑え、少ない時はイニシャルコストの負担が大きいため開発費や自動化にお金はかけられません。

(3) 自動化改善依存の生産性向上の限界

■企業が利益の低い投資プロジェクトを選択
 下図で日本製造業の総合生産性を労働生産性と資本生産性の側面から見ると資本生産性が著しく低いことがわかります。資本生産性は大企業では仏の1/2、独の1/3で、中小企業では仏・独の1/2(図)です。しかし労働生産性と資本生産性をつなぐ資本装備率は大企業では仏・独の3倍、中小企業でも2倍の水準にあります。日本は仏・独に比べて、従業員一人当たり2倍~3倍もの有形固定資産を使っていることになります。
 通常、資本装備率の向上は労働生産性に寄与します。図に示すように、仏・独では資本装備率の向上がそのまま労働生産性の向上に連動しています。しかし、日本の場合は近年の労働生産性は独にも抜かれ、中小企業に至ってはほとんど寄与していません。省力化のための設備投資であれば労働生産性向上に寄与するので、大企業の設備投資は省力化に、中小企業は現状の生産を維持するために使われていることが分かります。

 日本の製造業のROAが低い水準にとどまっているのは、資本生産性が著しく低いことが要因であり、これは企業の生産設備が有効に活用されず、収益を生み出していない ということなのです。日本企業の収益性が低い背景に、資本コストが低く株主が要求する利益水準も低いことがありますが、企業が利益の低い投資プロジェクトを選択していることが浮き彫りになります。

なぜ設備が労働生産性向に繋がらない


 下図は人と設備の効率を見るときのロスの内訳を示しています。設備は管理面のロスが減って設備効率が向上しても、設備に余力を作るだけで、減価償却費(設備費)は低減しません。それが人時間やエネルギーの低減に繋がったとき、変動加工費である直接労務費・燃料動力費の低減効果になります。そこで、ネックになる設備を重点管理対象にするが、ネック以外の設備効率向上に終始していないでしょうか。
 それより問題は、順調にいっていると考えている設備の稼働中のロスにあります。図に示す設備稼働時には加工・変形・変質を伴う基本機能だけで行いたいところですが、取り置き・運搬などの補助機能があります。設備を高速化して1サイクルの時間が短くなると、1サイクルに1回の取り置きによる補助機能比率が増え、正味の基本機能比率が低下します。自動化設備の代表である産業用ロボットも基本機能に使われている比率は極めて少ないのです。
 さらに、基本機能である加工、変形、変質を伴う時間にもロスが発生します。一台の設備で多品種を生産しようとするとMAXの要求能力の設備を導入しますが、稼働時はMAX能力が発揮されない設備の有効利用度のロスが発生します。図右下の基本機能の余白部分が設備能力の性能と寸法の未使用を示しています。もう1つの設備能力は機械スピードです。機械スピードは、品質条件に基づき、設備本体、工具・刃具、エネルギー、ワーク、治具などの生産要素の組み合わせで決まり、その中のネックとなる生産要素(切削油etc)を改善すれは速くなります。こうした技術的な課題を、製造現場の経験に依存していないでしょうか。