どうして「限界利益」って呼ぶのか

限界利益という利益があることを知り、限界利益の計算ができるようになると損得の判断が画期的に速くなります。そして、限界利益を仕事の場で正しく使えるようになると会社の業績向上に繋がります。

 

■6種類の利益概念があります

 

 会社は営利目的で事業を行いますが、目的とする利益は一つではありません。決算書(損益計算書)財務会計上で4種類、管理会計の2種類。合計6種類の利益概念があります。下記にその意味を解説しますが、算式については図表を参照して下さい。

○財務会計上の利益

・売上総利益:経営の機能には生産・販売・財務の3つの基本機能がありますが、そのうち生産機能の良否を示す利益で粗利益と同意です。

・営業利益:生産+販売機能の良否を示す利益で、本業の利益です。

・経常利益:生産+販売+財務機能の良否を示す利益で、正常な経営活動により生ずる期間利益です。

・当期純利益:当期には生じた期間利益に期間外の損益の経営活動より生じた損益を加味した利益で、税引前と税引後の利益があります。

○管理会計上の利益

・粗利益:売上総利益と同意です。 

・限界利益:商品やサービスを販売した際に直接得られる利益で、売上と連動して増減する利益です。

  ・付加価値:売上高より外部資源により付加された外部購入価値を除き、経営の内部資源の利用効率を示します。

 

 

 上記6つの利益は「売上高-費用・原価」 で計算されますが、売上高からどこまでの費用・原価を差し引くかを図表で参照して下さい。また、それぞれの利益を売上高で割ると利益率が計算できますが、図表に示した比率%は日本の平均的な製造業の数字です。

製造業では、売上高に対する粗利率は約20%、営業利益率は約3%で、販売費・一般管理費の比率は17%(20%-3%)です。さらに、製造業の限界利益率は35%、付加価値率は50%ほどです。

 

 全産業では、売上高に対する粗利率は約15%、営業利益率は約3%で、販売費・一般管理費比率は12%(15%-3%)です。すると、サービス業の利益率は製造業に比べて低いということになります。ただし、サービス業は、売上原価≒仕入原価(製造業の材料費・変動費)のため、粗利率≒限界利益率≒付加価値率になり、管理会計上の限界利益率と付加価値率はとりわけ製造業にとって大事な指標になります。

■利益の限界が「限界利益」か?

 限界利益および限界利益率について詳しく解説しましょう。売上高-変動費(材料費+変動加工費+α:販管費の中にある変動費)で求められる限界利益は、英語のlimit「限界」から想像して、利益の限界、というように考えがちです。しかし、もともと限界利益の英語は「marginal profit」で、それを和訳して「限界利益」になりました。

マージン(margin)は、「縁、端、余白、限界」のことで、商業では「原価と売価の開き、利ざや」の意味になります。これを聞くと「なるほど・・・」と思われる方も多いと思います。「この商品のマージンが大きい」などと日常用語でも使われることがありますね。marginalはmarginの形容詞ですから「縁の、淵の、やっと収支が償う、限界の」という意味です。こうしてmarginal profitは限界利益となりました。

ところで限界利益を計算したらどのように使うのでしょうか。もっとも基本的な問題をやってみましょう。

 

■2商品の選択問題:率ちゃんより額ちゃんを選ぶ

 財務会計は「過去の利益」の適正分配、管理会計は「未来の利益」の最大化が目的です。その時の利益は絶対額か利益率のどちらでしょうか。

A商品は80円で仕入れて10個/日売れ、B商品は85円で仕入れて20個/日売れます。販売価格は共に100円なので、利益の絶対額で見るとBが有利、利益率で見るとAが有利であることがわかります。ところが、ABは競合製品のため、いずれか1つしか選択でないとしたら「A・Bどちらの製品を選択しますか?」

 

 

■A・Bどちらかの製品を選ばなければならないとしたら、利益の絶対額の多いBを選択するのが正解です。商売の立場からすると、儲けが多い方がよいからです。

 

しかし、両方選択してよい場合は利益率の高いAから優先的に売ります。すると、最後には利益の絶対額が多くなります。結論は、どちらかを選ばなければならないときの選択は利益の絶対額の多い方を、両方選択してよいときは利益率の高い方から選択すると、会社の利益は最大になります。「率ちゃんより額ちゃん」が合言葉ですね。

■4製品の選択問題:限界利益額が大きいものを選ぶ

 それでは、さらにもう一問。下記の4製品の中で、どれを買うかを迷っている顧客がいます。接客をしているあなたにその選択を任されました。「あなたが勧めるものを買います。」と言ってもらえたのです。これはまたとないビジネスチャンスです。

図表は4商品の原価計算を行って利益と利益率を示しています。粗利率ではA、粗利益額ではD、限界利益率ではB、限界利益額ではCが優れています。4製品のうちいずれを選択しますか。

■正解はCですが、正解できたでしょうか。2製品選択問題では額を選択しましたので、4製品でも額の多いCかDを選択します。Dを選択すると収入100-支出112=48円の現金が残りますが、Cを選択すると収入140-支出97=53円の現金が残ります。本問では収入=売上高、支出=変動費、残る現金=限界利益になります。そこで、限界利益額が多いCを選択します。

 いやいや、わが社は「粗利が多い方を取る」という人もいるでしょう。しかし、限界利益が多い方を選択すると、粗利も同額だけ多くります。固定費は製品別に割り振られただけで、いずれの製品を選択しても会社全体の固定費は変わらないからです。意思決定の原則は「変わる所を考え、これから発生する収入と支出でお金の残る方」を選択します。

 実は、この問題に正解する人は10%ほどしかいません。普段の生活でも仕事でも判断ミスをしていることに気が付かない人が多いということですね。

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見える化でわかる

限界利益と付加価値

橋本賢一 著
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