生産技術者の組織上の役割

(1) 生産技術は設計と製造を繋ぐ役割

 

 サプライチェーンで考えると生産技術部門の顧客は、上流は開発設計部門⇒購買顧客であり、下流は生産管理部門⇒製造部門ですが、直接の顧客は開発設計部門と製造部門です。生産技術力に依存する素材系の生産財を生産する会社の場合は、上流の顧客は購買顧客であることがあります。

 開発設計部門から依頼された仕様の製品を製造するプロセスを設計し、それを標準作業として製造部門に提供します。標準作業が最適製造方式であるためには生産要素、とくに人と設備の最適組み合わせを実現することが大事です。そのうち、生産技術部門は「設備」を製造部門は「人」を提供します。いずれの場合でも生産性・利益の向上につながる製造方式を提供することが目的です。その役割は下記の3つに要約することができます。

 

役割1 最適生産方式を追求するモノ創りの役割           生産技術部門

―生産技術力で生産性向上から業績に貢献―

役割2 人が支える自動化モノ作りの役割              対製造部門

―製造部門へ人・設備の最適組み合せを提供―

役割3 多様化に対応する柔軟なモノ造りの役割           対設計部門

―設計モジュール化を製造段階で刈り取る―

 

 

 

(2) 生産技術者のスキルマップ

 

 下の図は、生産技術スキルマップを研修カリキュラムとしてまとめたものです。

・図の縦方向は、上流の設計部門から下流の製造部門までをつなぐ、生産技術の業務プロセスです。

・図の横方向は、初級レベルから上級レベルまで5段階にレベル分けしています。

スキルは「範囲の広さと質の深さ」です。そのため、会社が生産技術者に求める生産技術力は規模や業種によっても違いがありますので、会社独自のスキルマップを作られるのがよいでしょう。

(3) 改善とは現状の標準から改善後の標準に変えること

 

 下の図に示すように、生産性の向上には改善と管理の2つの側面があります。改善は技術部門が、現状の実態を標準として確保した後、改善後の標準を作り出します。しかし、標準と実態とは常に乖離があり、製造・管理部門は標準の実施効率を管理します。標準は組織上の役割を分けるために作られています。

 一般に改善とは、「現状の姿を改善後の姿に変えること」とされがちですが、現状の姿はあるがままの姿であり、何が現状であるかを明確にしてから改善に入らなければなりませんn。現状作業方法は常に現状作業標準からは逸れているのが実態であり、それがパフォーマンス(実施効率)です。したがって、これを一旦、現状の作業標準を作成するステップを踏まないと改善には入れません。改善とは「現状の作業標準を改善後の作業標準に置き換えること」です。こうして、改善後の作業標準が出来上がっても、改善後の実態は再び改善後の標準作業どおりには行われにくいものです。それが改善後の作業方法です。

 このように、実態はそれほど標準からは離れるものであることを認識しなければなりません。

現場力とは「標準どおり生産できる能力」です。すると技術部門で作り上げた標準を製造・管理部門で実現するマネジメント力が問われるのです。

(4) 役割によって違う2つのコストダウンがある

 

 標準作業方法とは、決められた作業条件の中で、決められた品質を確保する上で最良の方法・手順です。通常は最も時間値が短く、最もコストの安い方法です。コストダウンには、改善と管理の2つの側面があります。技術部門は、製品別の改善活動によって、製造・管理部門は、プロセス別の管理活動によってコストダウンをします。

 改善は、技術部門が部品点数の少ない製品を設計したり、最小工程・最小工数でできる工程を設計したりする活動です。一方、管理は製造・管理部門が、現在の仕事のやり方を前提にして、それに必要な生産要素(人、材料、設備、エネルギー)の管理水準を標準という形で明らかにし、標準に到達しない範囲をコントロールしていく活動です。これは、各管理者が自分の職務を効率的に行う管理努力によって達成できるコストダウンです。原価には改善により作りこむ原価と管理する原価があるということなのです。

 改善と管理によるコストダウンの違いを、標準原価を使って分けることができます。改善すれば標準原価自体が下がり、改善前の標準原価-改善後の標準原価でその成果を測ることができます。一方、管理活動の成果は、標準原価-実際原価の差異が少なくなったことで測ることができます。こうして、技術部門で行う改善と製造・管理部門で行う管理の責任数値を分けることができるのです。

 設備投資は改善、在庫は管理の領域であり、1,000万円のお金はどちらに使っても同じでなのです。